東大松尾研発スタートアップで、社長のパートナーとして成長を牽引
株式会社ACES 取締役CFO
2015年7月入社
アルゴリズム技術で、大小問わず社会全体へDXを促進したい
現在CFOを務めているACESは東大松尾研発のAIスタートアップ企業です。「アルゴリズムで、社会をもっとシンプルに。」というミッションのもと、人の知見を数式化することで、AIとヒトが協働するデジタル事業の開発に取り組んでいます。IGPIの投資先であるACESへの実行支援を行ったことがきっかけで、その後CEOの田村浩一郎に声をかけてもらい、参画を決意しました。
IGPIで様々なプロジェクトに従事するなかで、地方の産業を見てデジタル化の遅れを痛感していました。日本のDX(デジタル・トランスフォーメーション)は、人材や資金力が豊富な大企業では取り組みが進んでいますが、中堅・中小企業では思うように進まず、属人的な仕事の進め方が生産性の向上を阻んでいます。当時から、中堅・中小企業にもデジタル化をサポートする方策について考えを巡らせてきましたが、ACESのアルゴリズム技術を活用することで、資金や人材が十分でない企業にとっても、DXが可能になると確信し、日々会社の成長に邁進しています。
IGPIで学んだ「納得感」の大切さ
大学卒業後、大手監査法人に勤務していましたが、日本公認会計士協会でIGPIグループ会長の冨山和彦さんの講演を聞いたことがきっかけでIGPIを知りました。単なるアドバイザリーではなく、事業と財務を融合させ、ハンズオン精神を持つIGPIのビジョンに共感し、転職を決意しました。IGPIには5年半在籍し、実行支援を伴う事業再生や大企業向け戦略案件、M&A、ベンチャー支援など幅広い経験をし、経営人材としての力を身に着けることができたと思っています。創業100年を超える地方の老舗企業から、DX戦略・UX変革等を手掛けるグロース企業へのプリンシパル投資等、本当に様々な経験をさせていただきました。
IGPIで「事業を再生し、組織を作り直し、売上高を回復させ、スポンサー見つけて、再成長してもらう」という一連のフェーズをすべて経験し、その過程で、「人に動いてもらう」ということを学ぶことができました。戦略策定は、クライアントに当事者意識を持ってもらうことが何よりも重要です。「この戦略はIGPIからの提案ではなく、自分たちが考えた」と納得してもらうことで、実行フェーズの成功率が高まります。
実行インパクトを「戦略設計の質」×「取り組む人の納得度」で定義すると、設計の質が「90」であっても、納得度が「50」なら、実行インパクトは「45」程度に留まります。逆に設計の質が「70」しかなくても、納得度が「100」なら実行インパクトは「70」です。戦略の正解は決して1つではなく、やる人の納得度が高い方が、最終的な実行インパクトも高まるので、戦略の質だけを追及して絵に描いた餅にならないようにする必要があります。事業ポートフォリオの見直しやリストラ等、トップダウンでの決定が必要な項目もありますが、現場のアクションが必要な部分は、自分たちで決め、納得した状態で行動してもらうことが大事です。
現場へ経営視点をインストールする
また、現場と経営の視座の連結の重要性も実感しました。経営から現場へ落とし込む時に、抽象的な言葉で表現するよりも、具体的なアクションを求めたほうが、現場は理解しやすくなります。例えば、売上計画達成のため、新規顧客開拓を重要施策としている場合、営業担当者に対して、月に10件新規顧客訪問するように指示すれば基本はその通り行動してくれるはずです。しかし、アクションは実行できていても、結果である売上が計画通りいかないときに、「これでよいのか?」と思える「気づき」を与えるためには、経営目的の共有が欠かせません。現場担当者に、アクションだけではなくその背景にある経営目的・ゴール状態を理解してもらうことで、タスクではなくゴールを実現するために必要な取り組みを自ら考え実行してもらうことができるようになり、組織が強くなります。
ある企業再生のプロジェクトにて、製造部長や営業部長など各幹部が出席する会議で、再生プランについて「限界利益」などの用語を使って話をしていると、最初はほとんどのメンバーが言葉すら発しない状況でした。そこで、幹部に対して経営に関する研修を実施しました。再生計画を実行し、役目を終えてその会社を去る頃には、幹部たちが「この製品の限界利益率はXX%を切っているが、このまま最終優先として注力すべきなのか」などと熱心に議論している姿を見て胸が熱くなりました。
リアルな現場から得られるプロのノウハウ・知見のAI化に挑戦
ChatGPT等の生成AIの台頭により、DX市場の中でAI 領域の急伸が期待されています。また日本は業務のデジタル化が遅れており、映像・音声・言語などのそのままでは分析としえ使えない非構造化データが企業データの8~9割を占めると言われています。
ACESは、単なるデジタル化ではなくDeep Learningを用いてリアルにあふれる非構造化データの取り扱いを可能にし、そこからプロのノウハウ・知見をAIで再現できる点が強みです。
現在様々な企業様と業務提携をさせていただいており、事故車/中古車のB2Bオークション事業領域へのAI活用や、営業の化学(笑顔や頷き、アイコンタクトなどの非言語情報をアルゴリズムにより定量化等)、AIを用いたキャラクターのモーション生成等を実施しています。
また、自社アルゴリズムを組み込んだソフトウェアプロダクトを開発しており、商談における成約率の向上と現場の工数削減に寄与する営業支援AIツールや、LLM(大規模言語モデル)を用いた法人向けチャットボットを提供しています。
選り好みせずに経営課題に向き合い、経営人材へ
現在は、CFOのほか、コーポレート部門の管掌として、資金調達・業務提携の実行や中期経営計画の策定、予実・KPI管理、経理・経営企画、採用・人事、広報などにも目を配っています。企業経営のテーマはひとつではなく、様々な課題解決に向き合わなくてはなりません。経営に立ち向かうには全経営科目のイロハの「イ」を知っていることが大事です。一つでもゼロの項目あると掛け算で結局ゼロになってしまう怖さがあります。また、現在のように変化が激しく、明確なキャリア戦略が描きにくい状況において、大切なのは「目の前ことにどこまで本気で挑んで、いかに学びにできるか」だと思います。困っているクライアントがいるならば、選り好みせずに、一つひとつの経営課題を本気で解決していく姿勢が大事で、本気で取り組んで初めて自分の学びになるのだと思います。「経営人材のプラットフォーム」であるIGPIは、経営に必要なテーマなら何でも扱うので、それが実践できる最高の舞台だと思います。