IGPIレポート 共創

IGPIレポート 共創 2024年号vol.38

更生会社再建のみちのり~IGPI流CX~

鶏卵国内トップシェア企業の再建

その日は予報通りの寒波により、朝から肌が痛いほどの寒さでした。会議室では、みな沈痛な顔で必死に挽回の策を考えていました。「また鳥インフルエンザですか・・・。まずい、このままでは来月末には資金ショートです。」会社再建の任に就いて3ヶ月。再建の兆しが少しずつ見えてきていた中で連発する大規模トラブルに、経営チームは心が折れかけていました。

再建の舞台となるのは、全国で1,200万羽もの養鶏を行い、「森のたまご」ブランドで有名な鶏卵の国内トップシェア企業、イセ食品株式会社(現たまご&カンパニー株式会社)。創業100年を超える長寿企業で、これまで銀行借り入れをテコに急拡大してきました。ところが事業規模に対して、折からの飼料高騰を卵価に転嫁できず急激に業績が悪化し、2022年3月に会社更生手続きの開始が決定されます。イセ食品のスポンサー株主¹候補として数十社の手が挙がりましたが、入札の末、与信力・財務基盤の強いSMBCキャピタル・パートナーズ社、養鶏業界でトップクラスの経営効率性を有するトマル社、そして事業再生ノウハウを有するIGPIという3社連合コンソーシアムでの支援が決まりました。
(1)スポンサー株主:更生会社の事業再生・事業継続のため資金協力を行う企業

IGPIとして本案件に取り組む意義は2つありました。一つは、生活必需品である鶏卵で国内No.1のシェアを誇り、「食のインフラ」として機能しているイセ食品の経営再建とコーポレート・トランスフォーメーション(CX)を支援し、鶏卵供給を止めないこと。もう一つは、イセ食品の再生を機に、良好事例の横展開やほか事業者との合従連衡も視野に生産者の“稼ぐ力”を高め、より付加価値のあるサステナブルな業界づくり、いわゆるインダストリアル・トランスフォーメーション(IX)に貢献していくことです。

大志を胸に飛び込んだ私たちを待ち受けていたのは、逆境に続く逆境でした。何よりも経営に大きなインパクトを及ぼしたイベントは、鳥インフルエンザ(以下、「AI」)です。鶏舎内で一羽でもAIへの罹患が発覚した場合は農場全体の家禽処分が求められるため、鶏舎の大規模化が進んでいる昨今では、一度に100万羽近くの鶏を失います。私たちが入った直後からAI発生が連発し、3か月間で実に300万羽、つまり、売上の約25%を短期間で喪失しました。追い打ちをかけるように、ある鶏舎で火事が発生し、数十万羽を一夜にして失うこともありました。AIが発生するたびにただでさえ更生会社である当社の資金繰りはさらに悪化し、特にダメ押しの3件目のAIが発生した時には、いよいよ来月末に資金ショートするかもしれないというところまで追い込まれ、資金繰り対策に夜も眠れなかったことを覚えています。

再生へ向けたIGPIチームの取り組み

再生へ向けたIGPIチームの取り組み

未曽有の事態に追い込まれた状況でしたが、経営チームは奮闘しました。財務面では、資金ショートを避けるべく、金融機関や裁判所との折衝を繰り返しました。事業経営面では、バリューチェーンの川上から川下に至るまで、文字通り全方位的な支援を行いました。例えば飼料調達。養鶏業のコスト構造で飼料費は約40~50%にも上り、エサ代のコントロールは極めて重要な経営論点です。これまでは拠点により飼料スペックや値決め方法、輸送方法などが属人的に決まっていましたが、本社で全拠点分を一括管理し、飼料調達状況の見える化とスペック統一・最適化を行うとともに、競争入札を徹底しました。

また、飼育環境の整備も極めて重要です。鶏舎内が寒ければ体温維持のために鶏の運動量が増え、体内エネルギーが産卵以外に使われてしまいますが、逆に暑すぎてもストレスが溜まり、産卵効率が落ちます。そのため、鶏舎内の状況を示す様々な指標(KPI)をきめ細やかに見える化・モニタリングし、産卵に適した環境を安定して整えることがポイントになります。

こうした直接的なバリューアップ施策のほか、経営理念の再設定、社名変更とリブランディング、グループ組織体制のスリム化、人事評価制度の見直しなどの経営インフラ面も抜本的に見直し、CXへの道筋づくりも並行して進めています。過去何期にも亘って営業赤字を継続していたイセ食品でしたが、これらハンズオン支援の取組みが奏功し、現状(2024年1月現在)では逆境を抱えながらも営業黒字に転換を果たす見込みです。

IGPIでは今後もこのような出資を伴うリスク共有型の案件をさらに増やしていく想定であり、クライアントおよび支援先の皆さまとともに汗を流して伴走してまいります。

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